このお話は、元農林水産省食品総合研究所分析栄養部栄養化学研究室長(生物機能開発部長)
ノートルタ゜ム清心女子大学大学院・堀井正治教授(食品栄養学専攻)が、日本食品新聞社に寄稿された一部です。
今回は珍味に関する部分をご紹介します。
暮らしの中の珍味の役割
 食品のマーケットは、どのような選択も一見可能にみえる今こそ、心身の健康を守り、食生活の楽しみを最大限に享受するためにも、消費者に対して、賢明なる選択が迫られていると言えるであろう。
 食生活はドラマに例えることが出来る。いろいろな個性を有する俳優(食素材)を集めてドラマを作ったとしても、どんな脚本を選び、どのように演出(調理・味付け)するかによって出来上がるドラマはおのずから違ってくる。しかも、ドラマである以上、登場人物は主役・脇役・端役・その他大勢というように配役されているのが普通である。私達日本人は毎日、いろいろなドラマを食卓にあげて楽しんでいると言う事ができよう。
 ドラマもそれを演じる時と場所によって配役を異にする。すなわち、健康を守るための三度の食事における配役と、幕間狂言的なあるいはお酒を嗜みながら食事を楽しむといった際の配役とは当然違いがあるだろう。前者においては控えめに、そして後者においてはいきいきと役割を演じる役者がいわゆる嗜好品と呼ばれるものであり、「珍味」もこの範疇にはいると思われる。
 命の糧と違って、生活に潤いを与え、心の健康に供する嗜好品である以上、要求される資格・条件は、これからいっそう厳しいものになるであろうことが予想される。そして嗜好品のプロの仕事が要求されている。
珍味の姿は
 珍味は本来素朴なものであり、厚化粧は似合わない。シェルフライフをひたすら延ばすための添加物、原料の欠点を味付けでカバーする必要以上のの調味料、一見は美しい着色、原料節約のため増量材等々・・・・・これらはいずれも珍味の価値を高めるものでは決してない。手間暇かけて大切に製造され、食品自体の美味しさをしみじみと味合わせてくれるもの、それが本来の姿ではないだろうか。
 もちろん、ある程度の日持ちも必要であろうし、諸々の事情から包装によるだけでなく添加物を利用することもあろうが、その際「極少有効使用量」ということをよくよく考えていただきたい。なんのために使用し、どのくらい入れれば目的を達し得るかに注意を払ってほしい。添加許容量というのは、決して添加必要量のことではない。そして、ただ日持ちさせるだけが食品の価値だとは考えないで、短期間に食べてもらえる工夫も大切である。
 市場にはカニ棒のようになかなか人気のある商品もあり、食生活に大変に役立っている。これをコピー食品と言うそうであるが、珍味にも素材をそのまま生かしたものと、人工的な創意工夫によって造り上げたものとを区別して提供することが必要であり、代替品あるいはもどき食品をもつて珍味の代表のようにいうのは些か寂しい。
(右写真は良い食品を造る函館の山一食品のイカ珍味の生産現場の1コマ)
(上の写真の右は堀井教授と左は武田)
準備中