HACCP時代の食品加工と微生物
HACCPのその後の動向(2)

東京水産大学食品生産学科教授 藤井建夫

わが国の動向
厚生省
農水省
1992年
HACCPシステムによる食鳥処理場の衛生マニュアルを編纂。
  
1993年
食肉製品の自主衛生管理にHACCPシステムの導入を指導。
  
1995年
食品衛生法の改正により、HACCPシステムを取り入れた「総合衛生管理製造過程」と呼称する食品の衛生管理法が承認制度として導入される。
1995年
HACCPマニュアル策定事業を開始。
1996年
上記制度を施行。
  
1998年
乳・乳製品について最初の承認施設の発足。
  
1998年
厚生省・農水省共同でHACCP導入のためのハードの支援を目的とした「食品の製造過程の高度化に関する臨時措置法」が施行される。
図1 わが国のHACCPの動向(小久保、1998に追加)
 1995年4月、わが国の水産食品の衛生管理に問題があるとして、EU15カ国で日本からの水産物が全面輸入禁止になったことは、本シリーズのNo.1で述べた通りである。
 わが国では、1995年5月に食品衛生法が改正され、HACCPによる衛生管理手法を用いた総合衛生管理製造過程の承認制度が導入された。現在この総合衛生管理製造過程の承認の対象食品は、乳・乳製品、食肉製品、魚肉ねり製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰、レトルト食品)であり、各加工場では、HACCP工場認定のための申請・手続き・承認基準等の国のガイドライン(厚生省令)にしたがってHACCPプランを独自に計画し、申請、承認を求めることになる。
 HACCPシステムはわが国では自主衛生管理システムと位置づけられており、導入は強制的ではないが、米国やEUの水産物についてのHACCP規制は米国・EU内で製造される水産食品だけでなく、これらの国へ輸入される水産食品にも適用されることから、日本から輸出される製品ではHACCPは必須となる。
 1998年1月、HACCPに関する情報交換、普及のための産学官の参加による支援組織として、HACCP専門講師の育成、講習会テキスト・カリキュラムの作成、HACCPに関する教育と情報の収集・交換等を目的として、「HACCP連絡協議会」が設立された。
 また、HACCP導入のためのハード面の支援措置として、1998年7月、HACCPによる衛生管理を行うための一定の要件(高度化基準)を満たした施設を整備しようとする者に対して、長期低利の施設資金の融資と税制上の優遇措置を行う「食品の製造過程の高度化に関する臨時措置法」が施行された。

HACCPシステムの構築
1. HACCPチームの編成
2. 製品の特性記載
3. 意図する用途の特定
4. 製造工程一覧図、施設内見取り図の作成
5. 製造工程一覧図、施設内見取り図に従い現場検証
6. 危害分析
7. CCPの特定
8. 管理基準の設定
9. モニタリング方法の設定
10. 改善措置の設定
11. 検証方法の設定
12. 記録保管方法の設定
表1 HACCPシステム構築のための12手順
 HACCPシステムは前回述べた7原則を実行することが基本である。加工場でHACCPを導入するにはこれらの7原則を組み込んだ12手順(表1)に沿って施設・製品毎にHACCPプランを構築しなければならない。日常的な衛生管理はそのプランに基づいて機械的に行われる。次に挙げる12手順のうち、手順1〜5は手順6〜12の7原則を実行するための準備段階と考えられる。
 手順1 HACCPチームの編成:HACCPシステムを作成するには、まず製品について専門的な知識や技術を有する者でHACCPチームを編成する必要がある。
 手順2 製品の記述:HACCPシステムを適用しようとする製品について、その原材料、製品の特性、製造加工法、保存流通方式、食べ方など、製品の安全性確保に関するすべての情報を記述する。
 手順3 意図する用途の確認:対象製品はどのように使用するのかを確認し、消費対象が一般健康人であるのか、または乳幼児・老人・病院食などの特別の用途であるのかなどを確認する。
 手順4 フローダイヤグラムの作成:製品の原材料受け入れから出荷まで作業工程を記したフローダイヤグラム、食品と作業員の動きなどを示した施設内見取り図を作成する。
 手順5 フローダイヤグラムの現場確認:フローダイヤグラムおよび施設内見取り図が現場の実状を示しているかどうかを、実際の作業現場で作業中に確認し、実状と異なれば修正する。
 手順6 危害分析(原則1):原材料および加工工程について発生しうるすべての危害原因物質をリストアップし、それらの発生要因および制御のための防止措置を明らかにする。
 手順7 重要管理点の決定(原則2):フローダイヤグラムの各段階において、食品衛生上の問題発生が起こらないところまで危害の原因物質をコントロール(除去または低減)できる手順、作業段階を重要管理点(CCP)と決定する。CCPの数はできるだけ少なくすることが大切であり、一般的衛生管理プログラムで管理できるものは除く。
 手順8 管理基準の確立(原則3):各CCP毎に危害制御のための管理基準を設定する。管理基準には温度-時間、水分活性、pH、食塩濃度、官能的所見などが用いれる。
 手順9 モニタリング方法の確立(原則4):管理基準が許容範囲内にあることを測定または観察する方法を設定する。モニタリングは連続的に行うことが望ましいが、それができない場合はCCPが正常な管理下にあることが十分保証できる頻度で行わなければならない。
 手順10 管理基準逸脱時の措置の確立(原則5):逸脱が生じた時、誰がどのような是正措置を取るのか、逸脱した製品の廃棄はどのようにするのかなどを明記しておく。
 手順11 検証方法の確立(原則6):HACCPが計画通り機能しているか、また有効に機能しているかの検証方法を決めておく。この検証作業は現場のスタッフとは独立した専門家によって定期的に行われるべきである。
 手順12 記録の保管システムの確立(原則7):上記のチェック、検証、措置などを文書化して保管する方法を決めておく。すべての記録がその場で行われたものであることがあとで分かる必要がある。