伝統食品の成り立ち
 伝統食品といっても原料が異なり、土地の自然条件も違うので個々の食品の成り立ちについて述べることは難しいが、多少共通的な考え方を幾つかとりあげてみよう。これによってそれぞれの食品の特徴を理解すれば本来の姿、風味などを守り続ける道に通じると考える。
変敗防止と保存・・現在低温利用が広く普及しているが、昔から食塩は漬物に用いられて野菜の長期保存に役立つて来し、砂糖は練り餡に広く用いられる。水分を少なくすれば保存性を増すので乾麺や魚の干物に応用されている。
醗 酵・・わが国は温度で湿度が高いので微生物の繁殖に適しており、かびが生え易い原因となっている。このことは同時に有用微生物を利用して様々な伝統食品をつくるようになった。味噌、醤油、納豆の他日本酒、食酢など微生物の作用で原料から独特の風味、味がつくられる。
有用部と不要部の分離・・豆腐は大豆の中の蛋白や油だけを白い凝固物の形で取り出したもので、細胞壁や皮などはおからとして、水に溶けるえぐ味、渋味は上澄として大部分除かれる。したがって豆腐をつくる際は大量の水を使う。同じように餡では小豆の中の餡粒子(細胞の変化)だけを取り出し、皮や渋味、えぐ味は除かれている。水を使ってあっさりしたものに仕上げた食品には、この他麩があり、またちくわ、かまぼこなどがある。周囲を海に囲まれたわが国では水をふんだんに使って、河川に流すことができたのである
熟成・・醗酵は30℃近辺で微生物の作用を利用するので時間をある程度かける必要がある。必ずしも微生物でなくても時間をかけることにより風味をよくし、おいしくすることのできる食品でよく知られているのは手延素麺で、冬作られるが、おいしく食べるには出来た素麺を春をすぎて梅雨の終る頃までおいておくのがよいとされている。これは小麦粉中の酵素の作用や空気中の酸素の働きで小麦蛋白質の粘弾力が増したり、油の青臭みがとれるためという。凍豆腐は豆腐を凍らせ、戸外において解凍、凍結を繰返す内に豆腐を解凍した時に海綿状となり、脱水し易くなる、そのためには2週間位の期間が必要で、その間に大豆の蛋白質がお互いに手を結び合うようになる。これは一種の時間効果とでもいうべきものであろう
凍結、解凍を利用する乾燥・・寒天、餅、こんにゃく等は豆腐同様脱水しにくいので乾燥が難しい。しかし凍結、解凍を繰返す内に水が排出されるようになり、容易に脱水できる。この方法は恐らくわが国独特のものであう。
あく水の利用・・農作物の中にはエグ味、渋味を含むため食用しにくいものが多く、山菜はその例である。その際灰を水に溶いた上澄に原料を浸漬したり、時にはその中で煮込むことにより味をよくすることができる
灰の利用・・木炭は水を吸う力が強いので脱水しにくいものの水分を除くのに木炭を用いる方法がある。広く知られているのは灰干しわかめである。またかれいのような平たい魚に和紙をおいてその上を灰で被うと水分が灰の方に移動して魚は半乾燥状となり、勿論保存性がよくなる。この方法は豆腐の脱水にも用いられている。豆腐を紙か布に包んで灰の中にうめ込んでおくと水分が一部除かれ、豆腐はしっかりした均一なものになり、精進料理に用いられる。
(Jjapanfoodnews資料より