かまぼこと珍味
元京都大学農学部教授・農学博士 志水 寛
1 かまぼこの発想
 広辞苑を引くと、珍味とは「珍しい、味の良い食物」とある。その意味では、いま年間80万トンもつくられているかまぼこは珍味どころか、マスプロ食品と言わなくてはならなくなっているが、その素性を辿ってみると、実は料理から始っている。
 かまぼこを記載したもっとも古い文献は、今のところ、平安時代の後期に出された類聚雑要抄という書物だということになっている。永久3年(1115年)、京は東山三条、時の右大臣の邸で催された祝宴の膳のスケッチがそれで、膳の上の一皿に串付きの「ささかまぼこ」のようなかまぼこが載っているのである。
 干物にしても、塩辛にしても、漬物にしても、佃煮にしても、古来水産加工食品はみな、腐りやすい魚介類を何とかして日持ちさせたいという一心で作りだされたものばかりである。その中で、魚を三枚に卸して肉だけ取り分け、塩味を付けてすり潰し、串に付けて手焼きという手法は、誠に異色の加工法である。そこには保存しようという考えは全くない。うかがえるのは、「おいしく食べさせよう」という料理人の発想である。
 つまり、かまぼこはもともと貴族の舌を楽しませるために生み出されたグルメ料理であって、「おいしい」という趣旨では珍味と同類の加工食品なのである。

(日本食品新聞社掲載資料より)
2 珍味の手法としてのかまぼこ (