水産加工食品のミニ知識  TAKEDA編纂
魚はなぜ腐敗しやすいか
 これは、肉中の水分含量が高く、肉質は軟弱ですので、体表面粘膜に細菌が着きますと、簡単に除去しにくいことなどによります。水産食品の加工は、このような原料素材に物理的、化学的、ないしは生物学的な変化を与え、食品としての品質や食味を向上させ、同時に細菌の繁殖しにくい環境をつくり上げて貯蔵性を高めることを目的としています。古くから、加工法について多くの技術が開発され、主な製品としては乾製品、燻製品、塩蔵品、調味品および練製品などがあげられます。
乾製品・・・魚貝類から水分を除き、細菌の繁殖できない状態にして保存性を持たせた食品。
 水分量と保存性との関係は、必ずしも一定しているものではありません。同一水分量であっても、可溶性成分が存在しますと、食品の保存性は相違します。その理由は、細菌繁殖に必要な水分子は、食塩、糖などの可溶性成分が存在しますと、これらの成分の溶解に消費されてしまうためです。水分活性という水分子を目安にすると微生物の発育が分かります。水分活性(AW)1〜0.8に相当する水分子は、動きやすい性質を示しています。微生物の発育に必要な最低の水分活性は、細菌では0.90、酵母では0.88、カビでは0.80です。細菌類は乾燥に対して最も弱いのです。
(1)素干し品・・原形を保ったままの調理法で製造します。
 原料の品質が強く反映する食品です。原料の品質管理と同時に乾燥の促進をはかり、乾燥中に品質の低下のないようにしなければなりません。乾燥法にはね自然乾燥と人口乾燥があります。素干し品の代表格はスルメで、その歩留は、22〜23%です。
(2)塩干し品・・塩漬、乾燥した食品。
 原料魚を食塩水に浸漬する立て塩漬と原料魚に食塩を撒布する撒塩漬とがあります。塩漬の効果は、食塩と保存性の向上を目的としています。仕上がりの乾燥のて度の低い製品には、保存性は低く、低温が必要です。
(3)煮干し品・・原料魚などをあらかじめ煮熟して乾燥したものです。この場合の煮熟の効果としては、加熱による鮮度低下に関与する自己消化酵素作用の阻止、魚体表面の殺菌、肉タンパク質の熱凝固による脱水と肉中水分の拡散を容易にした乾燥の促進、イノシン酸分解酵素を失活させ、呈味成分のイノシン酸の保持などが期待されます。製品としては、一般的に煮干イワシがあり、鮮明な銀青色をして、油焼けのないものが良品です。高級品にははぎエビといわれるクルマエビ、ホタテ貝柱を煮熟、日乾した白乾と煮熟、焙干、日乾した黒乾があります。アワビはマダカまたはクロ種の内臓をつけたまま明鮑とマダカまたはクロ種の内臓をつけたまま明鮑同様に乾燥後さらに樽に詰めて、カビ付けを行った灰鮑などがあります。
(4)焼き干し品・・新鮮な魚体を焼きあげ、乾燥してから得られます。
 焼き効果は、煮熟の場合と同様に、自己消化酵素作用の抑制、殺菌などが期待されますが、呈味成分の溶出がなく、肉質の固い芳ばしい製品にすることにあります。製品は小ダイ、ワカサギ、アユ、ハゼ、カレイ、イワシ、川魚など小型のものを内臓を除去し、串刺しを行い、焼き上げので大量生産は期待できません。
(5)焙干品・・特徴は単なる乾燥による脱水ではなく、燻煙の中で脱水を行い、カビ付けして香味と保存性を付与した食品とえます。燻煙は、製品に香味を与えることを目的としていますが、製品の脂質酸化の抑制などの利点もあります。代表的な製品は節類です。
(6)凍乾品・・天然の冷気あるいは冷蔵庫の低温を利用して、原料中の水分の氷結、融解をくり返すと、水分は容易に流出しやすくなります。これを利用して乾燥したものを凍乾品といいます。また、凍結乾燥法では食品を凍結させ、ついで真空中で氷を昇華させて乾燥するのですが、魚貝類にこれを利用すると、組織がきわめて疎になり食感を悪くすることが知られています。スケトウダラでつくる素乾品、または同魚を凍らしながら乾かす明太があります。 (参考資料・日本食品新聞社発行・全国珍味商工名鑑・東京水産大学名誉教授・田口 武)