食品褐変のプラス、マイナス
 大妻女子大学家政学部食品学科教授 加藤博通
食品の褐変とは
 食品素材や加工食品を取り扱っていると、しばしば褐変が起こって困ることがあります。食品が自然に着色たり変色したりする原因はさまざまでありますが、元来食品を構成している成分はデンプン、タンパク質、脂肪といった炭素を含む有機化合物でありますから、これを適度に加熱したり、長時間保存すれば褐色化が進行して、最後には炭化するという性質をもっております。つまり褐変現象は、生物体(食品)を構成する有機物が共通してそなえている本性であります。
 しかしながら、たとえば100数10度に加熱した場合、砂糖は焦げてカラメルになって褐変しますが、精製された食用油は殆ど褐変しません。ところが天ぷら油として長く使用しますと次第に着色してきます。これは天ぷらに用いた材料や小麦粉の成分が油に移行して、油の安定性を低下させたわけであります。
 この例のように純粋な場合に安定であっても、他の成分が混じり合ってくると不安定になります。これは異なった成分間に反応が起るためであります。これを食品の成分間反応とよんでおります。
 生物体または細胞が生きている状態では、酸化酵素の作用で褐変が起ります。果実を傷つけると褐変します。ヒトの皮膚に紫外線が当ると色が黒くなっていきます。これは酵素の作用で褐変が起るので、酵素的褐変とよばれます。酸化酵素は基質の酸化を促進して、酸化された基質が褐変反応を起こします。つまり生物体や食品素材は複雑な成分の混合体であり、酵素その他の褐変を助ける要因が多く存在している褐変しやすい状態にあるといえます。酵素は加熱して失活させればよいわけですが、酵素が存在しなくなっても、前述の成分間反応によつて褐変は徐徐に進行します。酵素が関係しない褐変を非酵素的褐変とも呼びます。
 食品を製造する祭に、褐変が望ましくない場合が多くありますが、後に述べますように、褐変にともなって食品の品質形成にプラスになる点も多くあります。つまり食品の褐変は好ましい面と好ましくない面がありますので、それぞれの食品の品質をつくりあげる目的に応じて褐変反応を抑制することが必要になります。