経験しなかった選定条件
 珍味加工ではイカ製品が代表的であるが、日本沿岸産のイカ漁況の変動もあって、原料を大幅に輸入品に依存するようになって久しい。水産庁も、豪州、ニュージーランドに折衝して、原料イカの手当で奔走する状況である。
 いまの加工業では、このように原料素材にこれまで経験しなかった選定条件に迫られるようになり、そのために、海外産の魚種についての情報を把握するのも、経営の中の重要なプログラムになってきている。
 農業原料も同様であって、製アン業が輸入雑豆を主原料とするようになって、おそらく50年以上は経過しているのではなかろうか。もっとも輸入雑豆については、厚生労働省が特別に食品衛生法上の規制を設けているから、こうした特殊事情を一般化することの出来ないのは当然である。
質の違う素材をどう見極めるか
 加工の立場では、こうした名目はおなじでも質の違う素材をどう見極めるか、判断するかが、さし当って重要な課題となる。
 加工業者自身、あるいは素材提供の任に当る輸入業者が直接海外に出張して、原料を選別することも実施されている。典型例はシシャモの干物であるが、北海道で1,000トン程度の漁獲では、増加する需要に応じきれず、ノルウェー、アイスランドへ赴いて、雄雌の選別、品質評価をおこなっている。それまでケプリン(シシヤモ)は魚粉原料に過ぎなかったのに、今やその抱卵雌魚が大量に流れ込むことになったのである。多分、現在はこれら海外の漁業者もレッスンを学んで、自力で彼等が選別する段階になっていると思う。
 このように、原料事情は変遷しつつあり、それは止むを得ないことであり、ヘンに内地産とか、輸入材料などと質的感覚で区別しない方が望ましい。(このあいだテレビを見ていたらシシャモとケプリンとは違うといってことを言う男がいたが、お笑い草である)。妙に内地産を誇称するのは心なきわざというほかない。原料の品質保持管理に手落ちがなければ、とやかく内地産をハナにかけることはないのだ。
 ウルガィ・ラウンド以来、外国産の輸入が特に問題となっているが、コメにかぎらず、輸入食材がもたらす最大の問題は、その価格の安さである。大量生産、労賃の低さが必然する価格であるが、これと材質とは別物であることを、よく理解しておく必要がある。
 製油原料のひとつに大豆があるが、原料大豆は全部といってよいほど海外産(大豆の場合はアメリカ)である。内地産大豆を、仮に原料としたくても、太刀打ちできないのである。この傾向は企業規模が大きいほど、強くなるので、小規模企業の食品加工は留意する必要がある。
(日本食品新聞掲載資料より)